RequireJS を使うと、JavaScript のコードで、C/C++ の include のようなことができるようになります。 しかも、非同期にロードされるので、パフォーマンス上の利点もあります。
RequireJS で Hello World
RequireJS 本体 (require.js) は下記サイトからダウンロードできます。
ここでは、以下のようなディレクトリ構成でファイルを配置することにします。
- index.html
- js/main.js
- js/vendor/require.js
require.js を script 要素でロードするときに、data-main 属性の値として、任意の JavaScript ファイルを指定しておくと、require.js がロードされた後にその JavaScript ファイルを自動的に実行してくれます。
つまり、data-main で指定した JavaScript ファイルが、アプリケーションのエントリポイントとなります。
<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
<title>RequireJS Test</title>
</head>
<body>
<h1>Hello RequireJS</h1>
<script data-main="js/main.js" src="js/vendor/require.js"></script>
</body>
</html>require([], function() {
alert('Hello World');
});上記の index.html をブラウザで開くと js/main.js が自動的にロードされ、Hello World と表示されます。
エントリポイントとなる JavaScript ファイルには、require() を使って main 関数となる function を定義しておきます。
require() の第 1 引数には依存するモジュールを配列で指定できますが、今回は依存するモジュールはないので空にしてあります。
RequireJS モジュールを定義する
簡単なユーティリティ・モジュールの作成
エントリポイントとなる JavaScript ファイルからロードする RequireJS モジュールを定義するには、define() 関数を使用します。
ここでは、足し算 (add)、引き算 (subtract) の関数を提供する util/MathUtil モジュールを作成してみます。
define({
add: function(a, b) {
return a + b;
},
subtract: function(a, b) {
return a - b;
}
});上記の util/MathUtil モジュールを使うには、エントリポイントとなる関数を設定する require() 関数の第 1 引数でそのモジュール名を指定します。
すると、util/MathUtil.js 内で define() 関数に渡したオブジェクトを、main 関数の引数として参照することができるようになります。
<script data-main="js/main.js" src="js/vendor/require.js"></script>require(['util/MathUtil'], function(MathUtil) {
console.log('add: ' + MathUtil.add(100, 200));
console.log('sub: ' + MathUtil.subtract(100, 200));
});上記のモジュール名の指定方法 ('util/MathUtil') からも分かるように、ロードするモジュール名は、script タグの data-main 属性で渡したメイン JavaScript ファイルのディレクトリからの相対パスで指定します。
拡張子は必要ありません。
RequireJS モジュールから他のモジュールをロードする
もちろん、RequireJS モジュールの中からも別の RequireJS モジュールをロードすることができます。
require() 関数でモジュールをロードするときと同様に、define() 関数の第 1 引数でロードしたいモジュールを指定します。
下記の例では、util/Util1 モジュールから、util/Util2 モジュールと util/Util3 モジュールを参照しています。
// Entry point.
require(['util/Util1'], function(Util1) {
console.log('Util1 says: ' + Util1.message);
});define(['util/Util2', 'util/Util3'], function(Util2, Util3) {
console.log('Util2 says: ' + Util2.message);
console.log('Util3 says: ' + Util3.message);
return {
message: 'I am Util1'
};
});define({message: 'I am Util2'});define({message: 'I am Util3'});実行すると、コンソールに以下のように表示されます。
Util2 says: I am Util2
Util3 says: I am Util3
Util1 says: I am Util1
クラスモジュールを作成する
define() を使ってモジュールを定義するときに、コンストラクタとなる function オブジェクトを返すようにしておけば、クラスモジュールとして使えるようになります。
下記の例では、クラスモジュールとして Counter モジュールを定義しています。
require(['Counter'], function(Counter) {
var counter = new Counter(100);
for (var i = 0; i < 3; ++i) {
console.log(counter.get());
}
});define(function() {
// Constructor
var Counter = function(start) {
this.count = start;
};
// Methods
Counter.prototype.get = function() {
return this.count++;
}
return Counter;
});これを実行すると、以下のように表示されます。
100
101
102
RequireJS の r.js コマンドで JavaScript ファイルを圧縮する
r.js コマンドを使用すると、単一、あるいは複数の JavaScript ファイルを圧縮してひとつのファイルにまとめることができます。
圧縮する各ファイルは、RequireJS (AMD) モジュール の形式でコーディングされている必要があります。
つまり、ファイル内のコードが以下のようになっている必要があります。
define(..., function(...) {...});
あるいは、
require(..., function(...) {...});
r.js のインストール
r.js の実行環境としては Node.js を使うのが簡単です。
以下のように npm コマンドで requirejs パッケージをインストールすると、r.js コマンドも使用できるようになります。
$ npm install -g requirejs
インストールが終わったら、以下のように実行できます。
$ r.js ほげほげ
Windows 環境で .js ファイルがテキストエディタなどに関連付けられている場合は、以下のように .cmd 拡張子まで付けて実行します(r.js の実体は r.js.cmd です)。
これは、r.js というファイルをテキストエディタで開こうとしてしまうのを防ぐためです。
D:\> r.js.cmd ほげほげ
r.js で 1 つの JavaScript ファイルを圧縮する
カレントディレクトリにある main.js を圧縮して main.min.js として出力するには以下のようにします。
$ r.js -o name=main out=main.min.js baseUrl=.
複数の JavaScript ファイルを 1 つずつ圧縮することもできます。
以下のようにすると、js ディレクトリ内のファイルが 1 つずつ圧縮され、圧縮後のファイルが js-min ディレクトリに出力されます。
$ r.js -o baseUrl=./js dir=./js-min
r.js で複数の JavaScript ファイルを圧縮して 1 ファイルにまとめる
js/
+-- main.js # Entry point starting with 'require'
+-- Module1.js # Used from 'main.js'
+-- Module2.js # Used from 'Module1.js'
上記のような 3 つの JavaScript ファイルを圧縮して 1 ファイルにする例です。 JavaScript の内容は以下のようになっているとします。
require(['Module1'], function(Module1) {
console.log('I am main');
});define(['Module2'], function(Module2) {
console.log('I am Module1');
});define(['Module2'], function(Module2) {
console.log('I am Module1');
});次のように実行すると、全ての JavaScript ファイルが圧縮されて 1 ファイルにまとめられた main.min.js が出力されます。
$ r.js -o baseUrl=js name=main out=main.min.js
できあがった main.min.js の内容は以下のようになっています。
define("Module2",[],function(){console.log("I am Module2")}),define("Module1",["Module2"],function(e){console.log("I am Module1")}),require(["Module1"],function(e){console.log("I am main")}),define("main",function(){});コマンドラインで指定したオプションは、別ファイルに記述しておくこともできます。
以下の例では、build.js に設定を記述しています。
({
baseUrl: "js",
name: "main",
out: "main.min.js"
})$ r.js -o build.js
あとは、できあがった main.min.js を script タグで読み込むようにすれば OK です。
<script data-main="main.min" src="js/vendor/require.js"></script>3rd party ライブラリのライセンスコメントを残して圧縮する
r.js による圧縮をかけると、デフォルトでは JavaScript コード内のコメントは全て削除されます。
ただ、オープンソースコードを使用する場合はライセンスのコメントが消えてしまっては困るので、これを防ぐためのコメント記述方法が用意されています。
/*!
* ...
*/
あるいは、
/**
* @license
* ...
*/
という記述方法です。
どちらかの形でコメントを記述しておくと、r.js はそのコメントを残すようになります。
ただし、この方法で残されたコメントは全て 出力ファイルの先頭にまとまった形で出力されます。
どのモジュールのライセンスなのかが分かるように、コメントの先頭にモジュール名を記載しておくのがよいかもしれません。
下記の例では、圧縮する 3 ファイル中、2 つのファイルがライセンスコメントを含んでいます。
/**
* Normal comment.
* This should be removed after minifying.
*/
require(['Module1'], function(Module1) {
console.log('I am main');
});/*!=== Module 1 ===
* License description for Module1.
*/
define(['Module2'], function(Module2) {
console.log('I am Module1');
});/*!=== Module2 ===
* License description for Module2.
*/
define(function() {
console.log('I am Module2');
});圧縮後のコードは以下のようになります。
/*!=== Module2 ===
* License description for Module2.
*/
/*!=== Module 1 ===
* License description for Module1.
*/
define("Module2",[],function(){console.log("I am Module2")}),define("Module1",["Module2"],function(e){console.log("I am Module1")}),require(["Module1"],function(e){console.log("I am main")}),define("main",function(){});require.js も含めて 1 ファイルにまとめる
ディレクトリ構成が次のようになっているとします。
- js/main.js
- js/Module1.js
- js/Module2.js
- js/vendor/require.js
r.js コマンドを実行するときに、次のようにインクルード指定することで、最終的に出力されるファイルに require.js のコードまで含めてしまうことができます。
$ r.js -o baseUrl=js paths.requireLib=vendor/require name=main include=requireLib out=main.min.js
main.min.js に require.js が含まれていれば、HTML ファイルからのロードは以下のようにシンプルになります。
<script src="main.min.js"></script>
RequireJS の r.js でプロジェクト全体を圧縮する
r.js コマンドは、単純に JavaScript ファイルを圧縮する機能の他に、CSS ファイルの連結や、プロジェクト全体のリリースファイルをまとめてディレクトリに出力する機能も持っています。
例えば、Web アプリの構成が以下のようになっているとします。
- sample/
- webapp/ ← HTML/CSS/JavaScript が含まれている
- build.js
プロジェクト単位で圧縮&リリースファイル生成を行うには、r.js の設定 (build.js) で、appDir(入力ディレクトリ) と dir(出力ディレクトリ) を指定します。
({
// Input directory
appDir: './webapp',
// Output directory
dir: './release',
// Use shim settings in the require.config()
mainConfigFile: './webapp/js/main.js',
// Application's entry point
name: 'main',
// Remove files from the output directory that were combined
removeCombined: true,
})あとは、build.js ファイルがあるディレクトリで r.js コマンドを実行すれば、リリース用のファイル郡が含まれた release ディレクトリができあがります。
$ r.js -o build.js
出力される release ディレクトリには、必要な HTML/CSS ファイルがすべてコピーされ、JavaScript としては require.js と、圧縮された main.js ファイルの 2 ファイルだけが格納されます。
RequireJS の r.js の設定メモ (build.js)
build.js ファイルの各設定の説明
各設定値がどこからの相対パスになるか?
- appDir, mainConfigFile
- カレントディレクトリからの相対パス
- baseUri
- appDir がある場合はそこからの相対パス
- 何も指定がない場合はカレントディレクトリからの相対パス
- paths, packages
- baseUri からの相対パス
- name, include, exclude, excludeShallow, deps
- ファイルパスではなく、モジュール ID で指定
JavaScript を 1 ファイルに圧縮した場合にどのファイルのコードが結合されるか
JavaScript ファイルを、name に指定したモジュールに結合する場合、基本的には define() や require() で定義されているモジュールはすべて含まれます。
逆に、RequireJS (AMD) 形式のモジュールじゃないライブラリ(例えば Backbone.js 1.0.0 や Underscore 1.5.1)はデフォルトでは圧縮後に結合されません。
これらの外部ライブラリも含めてしまいたい場合は、以下のような方法があります。
mainConfigFileで設定する JavaScript ファイルのrequire.config()のshimプロパティでモジュール名を指定する方法(これが推奨されている)build.js内のshimプロパティでモジュール名を指定する方法(結局main.jsにもshimの設定しているなら、そちらを参照するようにmainConfigFileを使ったほうがよい)include/excludeオプションで明示的にモジュール名を指定する方法
例えば、build.js で以下のように mainConfigFile を指定し、
({
appDir: './webapp',
dir: './release', // output dir
mainConfigFile: './webapp/js/main.js', // including require.config()
name: 'main', // app entry point
})指定した main.js が以下のような shim 設定を含んでいる場合、
require.config({
baseUrl: 'js',
paths: {
backbone: 'vendor/backbone-1.0.0.min',
jquery: 'vendor/jquery-2.0.3.min',
underscore : 'vendor/underscore-1.5.1.min'
},
shim: {
backbone: {
deps: ['jquery', 'underscore'],
exports: 'Backbone'
},
underscore: {
exports: '_'
}
}
});
require(..., function() {...main code...});最終的に結合された main.js に、Backbone.js や Underscore.js のコードも含まれるようになります。
mainConfigFile で参照している JavaScript ファイル内の paths 設定で、CDN から jQuery などのライブラリをロードするようにしているときは注意点が必要です。
この場合は、それらのファイルは結合せずに都度インターネット上から取得するようにしておきたいので、以下のようにして結合対象から外しておく必要があります。
({
...
paths: {
jquery: "empty:"
}
})RequireJS モジュールとして jQuery、Backbone.js、Underscore.js を使う
以下のようなディレクトリ構成のときに、RequireJS 経由で Backbone.js を使用する例です。 Backbone.js は jQuery や Underscore.js に依存しているので、それらを使用する設定も必要です。
- index.html
- js/
- main.js
- vendor/
- backbone-min.js
- jquery-2.0.3.min.js
- require.js
- underscore-min.js
<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
<title>r.js test</title>
</head>
<body>
<h1>index.html</h1>
<script data-main="js/main.js" src="js/vendor/require.js"></script>
</body>
</html>AMD モジュールのフォーマットに対応していない Backbone.js、Underscore.js を RequireJS で扱うには、以下のように require.config() の shim 設定をしておく必要があります(jQuery は AMD に既に対応しています)。
require.config({
baseUrl: 'js',
paths: {
backbone: 'vendor/backbone-1.0.0.min',
jquery: 'vendor/jquery-2.0.3.min',
underscore : 'vendor/underscore-1.5.1.min'
},
shim: {
backbone: {
deps: ['jquery', 'underscore'],
exports: 'Backbone'
},
underscore: {
exports: '_'
}
}
});
require(['jquery', 'MyModel'], function($, MyModel) {
$(function() {
console.log('DOM is ready!');
var model = new MyModel();
alert(model.get('message'));
});
});define(['backbone'], function(Backbone) {
var MyModel = Backbone.Model.extend({
defaults: { message: 'Hello, I am MyModel' }
});
return MyModel;
});