Vim のキーマップの基本 (map, noremap)

Vim のキーマップとは

Vim の *map 系コマンドを使うと、キーマップ(キーバインド)を定義できます。 キーマップとは、特定のキー入力(キーシーケンス)を別のキー入力に変換する機能です。 例えば、<F1> キーを押すことで :help コマンドを実行するように設定することができます。 頻繁に使うコマンドを短いキーシーケンスに割り当てることで、効率的に作業できるようになります。

Vim では、ノーマルモード、インサートモード、ビジュアルモード、コマンドラインモードなど、それぞれのモードごとにキーマップを定義できます。 また、noremap 系コマンドを使うことで、マッピングの伝播を防ぐことができます。

キーマップのヘルプ

Vim のキーマップに関するヘルプドキュメントは、以下のコマンドで表示することができます。 必要に応じて参照してください。

:help map.txt
:help key-mapping

map 系コマンドによるキーマッピング

キーマップの設定を行うには、主に以下のようなコマンドを使用します。 コマンドを使い分けることによって、特定のモードでだけ有効なマッピングを定義できます。

  • map … ノーマルモード、ビジュアルモード用のキーマッピング
  • nmap … ノーマルモード用のキーマッピング
  • vmap … ビジュアルモード用のキーマッピング
  • imap … インサートモード用のキーマッピング
  • cmap … コマンドラインモード用のキーマッピング

よく使用するのは、ノーマルモード用のマップ定義を行う nmap と、インサートモード用のマップ定義を行う imap です。

マッピングの定義は、以下のような形式で行います。

キーマップの基本的な書式
:nmap入力するキーシーケンス> <実行するコマンド:imap入力するキーシーケンス> <実行するコマンド

例えば、下記のように実行したあとで、インサートモードで Ctrl キーを押しながら F10 キーを 2 回押すと、カーソル位置に Hello World が挿入されます。

キーマップの例(インサートモード用)
:imap <C-F10><C-F10> Hello World
☝️ ワンポイント <C-F10>Ctrl キーを押しながら F10 キーを押すことを表します。 このようなキー入力の表現方法は、:help key-notation で詳しく説明されています。

もっと単純に F10 キー 1 つに割り当ててもよかったのですが、ここではこんな複雑なキーシーケンスにもマッピングできるよという例を示しています。 同様のキーシーケンスをノーマルモード用に割り当てる場合は、下記のように先に i コマンドでインサートモードに入らないといけないことに注意してください。 最後には <Esc> でノーマルモードに戻ってあげると行儀が良いです。

キーマップの例(ノーマルモード用)
:nmap <C-F10><C-F10> iHello World<Esc>

下記はいろいろなキーマップ設定の例です。

キーマップ設定の例 (~/.vimrc)
" '-' キーでカーソル位置の単語を削除
nmap - diw

" 'F1' キーで 'Hello' を挿入
nmap <F1> iHello<Esc>

" Ctrl+Tab で次のバッファへ切り替え
map <C-Tab> :bn<CR>

" Ctrl+Shift+Tab で前のバッファへ切り替え
map <C-S-Tab> :bp<CR>

noremap 系コマンドによるキーマッピング

map 系コマンド(map, nmap, vmap, imap, cmap 等)によるマッピングは、右値に指定されたコマンドが既にマッピング定義されていると、そのマッピング値が使用されます。 つまり、マッピング定義が伝播します。 例えば、

:imap <C-T> Hello
:imap <F1> <C-T>   " Hello という入力に置き換えられる

と定義してあるときに、インサートモードで F1 キーを入力すると、F1 キーにマッピングされているコマンド Ctrl-T は既に Hello にマッピングされているので、Hello と入力されます。 このようなマッピングの伝播を防ぐには、map 系コマンドの代わりに、noremap 系コマンドを使用します

:imap <C-T> Hello
:inoremap <F1> <C-T>   " Ctrl-T の入力として扱われる

上記のように設定すると、F1 キーを入力したとき、Vim がデフォルトで Ctrl-T に割り当てている機能である「インデント」の振る舞いをします。

☝️ i_CTRL-T インサートモードで Ctrl-T を入力したときの振る舞いは、:help i_CTRL-T で調べることができます。 デフォルトでは、現在の行に shiftwidth 分のインデントを挿入する機能に割り当てられています。 似たようなキー割り当ての一覧は、:help index で調べることができます。

map 系のコマンドと同様に、noremap 系のコマンドも各モード用にキーマップ定義を行うためのコマンドが用意されています。

  • noremap … ノーマルモード、ビジュアルモード用のキーマッピング(マッピング伝播なし)
  • nnoremap … ノーマルモード用のキーマッピング(マッピング伝播なし)
  • vnoremap … ビジュアルモード用のキーマッピング(マッピング伝播なし)
  • inoremap … インサートモード用のキーマッピング(マッピング伝播なし)
  • cnoremap … コマンドラインモード用のキーマッピング(マッピング伝播なし)

参考