Android エミュレーター内のサーバーに外部からアクセスする (adb forward)

Android エミュレーターへのポート転送 (adb forward)

サーバー機能を持つ Android アプリをエミュレーターで動作させているときに、ホスト PC の外からエミュレーター内のサーバーにアクセスするには、adb forward コマンドによるポート転送の設定が必要です。 例えば、次のようにフォワード設定すると、ホスト PC の 9080 番ポートへのアクセスが、エミュレーターの 8080 番ポートへ転送されるようになります。

PC の 9080 ポートをエミュレーターの 8080 ポートへ転送
$ adb forward tcp:9080 tcp:8080
9080

次の図は、Android エミュレーターを動かしている開発用 PC (192.168.1.1) を経由して、エミュレーター内の Web サーバーにアクセスする構成を示しています。

adb forward によるポート転送
図: adb forward によるポート転送

外部の端末(PC やスマホ)から見ると、開発 PC (192.168.1.1) 上で Web サーバーが動いているかのように見えます。 Web ブラウザーで http://192.168.1.1:9080 という URL を開けば、エミュレーター内の Web サーバーに繋がります。 開発 PC 上で Web ブラウザーを開いてアクセスする場合は、自分自身にアクセスする形になるので、http://localhost:9080http://127.0.0.1:9080 のようなループバックアドレスを指定します。 この構成は、Android アプリ内のサーバープログラムを、PC 上のツールを使ってデバッグしたいときに便利です。

正確に言うと、adb forward によるポート転送はエミュレーター専用というわけではないので、USB で接続されている Android 端末への転送も可能です。 ただ、通常、物理スマホなどは直接 LAN に繋がっていることが多いので、ポート転送が必要になるケースは少ないでしょう(adb shell ip addr で端末のアドレスを確認して直接アクセスした方が早い)。

ちなみに、現在のポート転送設定は adb forward --list コマンドで確認できます。

ポート転送設定の一覧
$ adb forward --list
Y7HRR58M60D tcp:9080 tcp:8080

転送設定を削除したいときは、adb forward --remove/--remove-all コマンドを使用します。

ポート転送設定を削除
$ adb forward --remove tcp:9080  # 個別に削除
$ adb forward --remove-all       # すべて削除

エミュレーターからホスト PC を参照する

エミュレーター内で動くプログラムから、ホスト PC を IP アドレスで参照したいときは、10.0.2.2 という特殊なループバックアドレスを使用します。 localhost127.0.0.1 というアドレスは、エミュレーター内のデバイスのループバックアドレスであることに注意してください。

エミュレーターからホスト PC を参照する
図: エミュレーターからホスト PC を参照する

ホスト PC を参照した結果、そのポートが adb forward で転送設定されている場合は、そのパケットはさらに別のエミュレーターに転送されます。 例えば、以下の構成では、Emulator 2 からのホスト PC へのアクセス (10.0.2.2:9080) が、Emulator 1 へポート転送されるようになっているため、結果的にエミュレーター間の通信が実現できています。

エミュレーター間の通信
図: エミュレーター間の通信

(おまけ)テスト用の Web サーバー実行ファイル

本記事の構成を試してみたいときは、コマンドラインで実行できる簡易 Web サーバーがあると便利です。 下記は、Golang 製の簡単な Web サーバーの実装例です。 ポート番号 8080 で待ち受け、Hello という文字列を返します。 IP アドレス部分に 0.0.0.0 を指定しているのは、外部のネットワークからのアクセスを許可するためです。

hello.go
package main

import (
	"log"
	"net/http"
)

// 0.0.0.0 の部分を省略すると、同一ネットワークからしかアクセスできないので注意
const addr = "0.0.0.0:8080"

func main() {
	http.HandleFunc("/", func(w http.ResponseWriter, _ *http.Request) {
		w.Write([]byte("Hello"))
	})
	log.Printf("Serving on: %s\n", addr)
	log.Fatal(http.ListenAndServe(addr, nil))
}

次のような感じでビルドして Android 端末に転送すれば、Web サーバーを起動できます。

$ GOOS=linux GOARCH=arm go build -o hello hello.go
$ adb push hello /data/local/tmp
$ adb shell /data/local/tmp/hello
2022/10/21 20:25:47 Serving on HTTP port: 8080

Web サーバーを停止したいときは、Ctrl + C で終了するだけで OK です。 ホスト PC 上で別のターミナルを開いて、ポート転送設定 (adb forward) すれば、ホスト PC の IP アドレスを使って Web サーバーにアクセスできるはずです。

$ adb forward tcp:9080 tcp:8080
9080

$ curl localhost:9080
Hello

ネットワークまわりのテストをしたいときに便利です ٩(๑❛ᴗ❛๑)۶ わーぃ