tokio とは
tokio は、Rust 用の非同期処理ランタイムです。
さらに、ネットワークアプリケーションの構築に必要な TCP ソケットなどのライブラリも含まれています。
Rust 言語には、コード上で非同期処理を表現するための async/await
構文が用意されていますが、実際に非同期処理を動かすためのランタイムは標準搭載されていません。
非同期処理用の代表的なランタイムが tokio
クレートです。
Rust の async
は、ソフトウェアにより非同期処理を実現する仕組みであり、スレッド (std::thread
) と比べてコンテキストスイッチのコストがかからないという利点があります。
非同期ランタイムの tokio
はサードパーティライブラリとして提供されていますが、非同期処理で使われる Future
トレイトなどは Rust に標準搭載されています。
tokio の依存関係の追加
tokio を使用するには、cargo add
コマンドで Rust プロジェクトに依存関係を追加します。
ここでは、tokio のすべての機能を有効化するために --features full
オプションを指定しています。
$ cargo new myapp # (必要があれば)新規プロジェクトを作成
$ cd myapp
$ cargo add tokio --features full
cargo add
コマンドを使用する代わりに、次のように Cargo.toml
ファイルに依存関係を記述しても OK です。
async/await による非同期処理
下記は Rust の async/await
構文の基本的な使い方です。
非同期実行する関数を定義するには、async fn
という構文を使用します。
上記の say_world
関数と main
関数は両方とも非同期関数として定義されています。
非同期関数は say_world()
のように通常の関数と同じ形で呼び出せますが、このタイミングでは実行されず、代わりに Future
インスタンス(Future
トレイトを実装した型)を返します。
Future
インスタンスが指す非同期関数が実際に実行されるのは、.await
を呼び出したときです。
結果として、上記の main
関数を実行すると、Hello
、World
の順番で出力されます。
.await
の呼び出しは、非同期関数 (async fn
) の中でしか許可されていません。
上記の main
関数は非同期関数として定義されているので、.await
の呼び出しが可能です。
main
関数は非同期処理が可能なコンテキスト(=ランタイム)で実行されなければいけないので、#[tokio::main]
というアノテーションをつけて、非同期処理ランタイムの tokio で実行するよう指示しています。
tokio::spawn で非同期処理をすぐに開始する
前述の例からもわかるように、Future
インスタンスの .await
を呼び出すまでは、非同期関数の実行は開始されません(これは他の言語とは異なる部分かもしれません)。
でも、これだと、その非同期処理が終わるまでそこで待機してしまうので、他の非同期関数を並行して動かすことができません。
Future
が指し示す非同期関数を直ちに実行開始するには、tokio::spawn()
に Future
インスタンスを渡します。
次の例では、実行完了までに 3 秒かかる関数 (process
) を、2 回連続して呼び出しています。
3 秒かかる 2 つの処理を同期実行したら 6 秒かかるところですが、ここでは spawn()
で 2 つの非同期処理をほぼ同時に実行開始しているので、合計で 3 秒しかかかりません。
spawn()
で開始した非同期処理が完了するのを待機するには、spawn()
が返す JoinHandle
の .await
を呼び出します。
2 つ以上の非同期処理がすべて完了するまで待機したいときは、JoinHandle
の .await
を個別に呼び出すのではなく、tokio::try_join!()
にすべての JoinHandle
を渡します。
それぞれの非同期処理の結果はタプルとしてまとめて返されます。
// すべての非同期処理が完了するのを待つ
let results = tokio::try_join!(task1, task2).unwrap();
println!("{}, {}", results.0, results.1);